結局一日やりきれない思いを抱えたまま仕事をして、夜帰ってから業者を呼び250HK$(4000円近く)代償を払ったのです。
そうしてなんとか家の中に入りました。その時まだ夕食は食べていなかったのですが、精神的に疲れてしまい外で食べるのがとても億劫に感じられたので、かといってうちで作るなんて決してありえない人なので、テイクアウトをするためにマックに向かいました。
訪れてみると、その店は客も少なければ店員も少ないという状態でした。一人の店員がさばくのを数人の客が待っていました。私の前には小学生くらいの男の子がいて、見ると手になにやら紙を持っています。自分の番になるとお店の人に無言でその紙を手渡しました。「サラダが欲しい」というようなことがそこに書かれていたようです。
ああ、日本人の男の子なんだなとその時直感で思いました。ここらは日本人が多く住む地域であるというのも理由の一つですが、
母:ねえ、ちょっと一品足りないからサラダでも買ってきてよ。というようなストーリーを想像したのです。
息子:(ゲームボーイアドバンスから目を離さずに)やだ。英語わかんないし。
母:ほら、この紙見せれば買えるから、行きなさいよ、いつまでもファミコンやってないで。
(どんなゲーム機をも「ファミコン」呼ばわりする、なんていうのは今時の母親っぽくないかもしれませんが)
終始黙秘を続けていた彼ですが、やがてマックはやはりマックであるがゆえに店員から「飲み物はいかがですか」なんて聞かれてしまい、しばらく固まった後に大きく全身を振って拒否していました。
観察を続けながら私は自分が小学生だったころのことを思い出し、彼の気持ちをなんとなく推し量ることができました。好きでもないのに連れてこられた香港に順応するということを、わけもなくカッコ悪いことのように感じているんじゃないでしょうか。また、そういう境遇の男子でつるんで、みるみる英語を吸収して生活を楽しみだす女子のことを悪く言ってみたり……。
いやいや、カッコ悪いことも客観視してみたら面白いことなのだよと、今の私なら思えるのです。怪しい広東語でオーダーするだけでマックのお姉さんを手玉に取れるんだよ! 君の歳ならできる!! と熱く彼に語ったならば間違いなく敬遠されるでしょうが。
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