2003年12月30日

(TEXT)17期『珈琲ブルース』(宇加谷さん)

 正直に言うと、惜しいなあと思うのです。既に読み終わっていることを前提にこの項書き進めますが、ええと、一番最後に『入試まで8時間』って出てきます。その文がその位置にあるということは、びっくりする、感心するなど、そこでとにかく何がしかのがアクションが読者に要求されている、と私はうがって考えてしまったのです。実際には私はそこで「はあ、そうですか」という気のないリアクションしかできず、そしてそのまま読み終わってしまいました。『入試まで8時間』というのが作者の考える奇天烈ならば、それを文の前半に持ってきて、その勢いで最後まで引っ張るというほうがいいような気がします。最後に持ってくると不発の処理ができません。
 メモという形で、本文に追加で加わっている別種の文章があります。これが本文ほどには良くなく、そして少し分量が多くて少し残念でした。
 悪いことばかり書いてしまいましたが、前半は作者の宇加谷さんの味わいがぞんぶんに出ていたと考えます。その、独自性で勝負しようとしているところは、私はおいしく読み取れたと思っています。

(TEXT)改めて『短編』を読んでみる

 投稿しなかったのでしばらく遠ざかっていた『短編』ですが、たまたま今回自分が投稿したので、今更ながら昔のも含めて読み出し始めました。うんうん、やっぱり面白いですね。
 掘り出し物だったのは15期の『裾野』(ユウさん)。これはとても濃いですね。独特な世界観と滑稽さを兼ね備えていて。感想を見ると「純文学」と評している人もいますが、どちらかというとそういうジャンルわけは相応しくないんじゃないかと。一番感じたのは『力』です。作者に由来するであろう強い『力』で文章世界に一気に引き込んでいます。
 思いついたストーリを小細工してちまちまと仕上げると、デジャヴっぽくなるのは避けられないと思うのです(すいません、この部分感想ではなく自省になってます)。だから、この作品のような固有な匂いを放つものこそ読む価値がある、と考えます。「なんなんだ、これは」と思わせたもの勝ちなんです。

 長期休暇に入るとネットめぐりをする人も少なくなるでしょうから、その間隙を縫うようにこんな感じで「読後メモ」を書きはじめてみます。どれくらい続くか分かりませんがお付き合いいただければ幸いです。

2003年12月28日

(TEXT)この一年

 昔の『書く』知人である紺さんの復活を知ったのが今年の一月ぐらいで(そうそう、そのすぐ後にこれまた知人の妄言王さんも復活されたのでした)、それがきっかけでまたぽつりぽつりと1000字なんか書き出したりして、それから香港行きが決まって、そしてまた懲りずにホームページなるものでも作ってみるかと思い始め、結局今のこのページに至ります。何とか継続だけはしています。
 全てこの一年に起こったことだと思うと、ちょっとびっくりします。改めてネット時間の早さを感じます。
 ええと、こんなことを書いていますが、香港は旧正月なので仕事は一月一日だけが休みです。すなわち当ページの更新も普段の週と同じなのではないかと、希望的観測で思います。というわけで、『よいお年を!』は保留の方向で。

(HK)この服装がまずいのか?

 日本人の私にとっては、昨日土曜日は小春日和に感じられたので、長袖のシャツにジーンズという格好で昼ごはんに行きました。たまたま他の人と時間が合わなかったので一人でした。かばんは会社に置いてきたので、身軽ないでたちです。
 のほほんといつも行く吉野家に向かって歩いていると、それらは突然私に近づいてきて、訝しげに広東語で尋ねるのです。香港のおまわりさんです。
 結局、広東語は話せないと伝え、求められるがままに財布の中からIDカードを出して見せ、簡単な質問にいくつか適当に答えたところ解放されました。

 後から考えるに、香港人にとっては今の季節はかなり寒く感じられるらしいので、そんな格好でいるのがよっぽど奇妙だったのではないかと。加えて手ぶらだったので、どことなくみすぼらしく、彼らが総合した結果、中国の北の方から来た不法滞在者を思わせるに十分だったのではないかと。
 暑いのをがまんして、コートでも着ましょうか、それならば。

2003年12月24日

(HK)歓楽聖誕!

 でっかい2階建てのバスがうじゃうじゃと香港では走っています。運転席の上の部分——1階と2階の間の部分——に行き先表示の大きな液晶らしきものが備え付けられています。それがふと目を止めると、行き先ではなく歓楽聖誕と表示されているのです。おまけに中英両記が基本なのでMerry Christmasらしき文字(すいません、小さかったのでうろ覚えですが)も添えられていて。よくよく観察すると、10秒のうち2秒ぐらい歓楽聖誕に切り替わっているのでした。
 香港はクリスマスが本当に好きなのかもしれません。ですがそれより、香港は過剰なまでのサービス意識を有している、そしてそれこそが観光業を生業としている香港の特性なのだと考えたほうがいいような気がします。

 昨日職場にてクリスマス・ランチなる催しがありました。決められた金額内でプレゼントを買って来い、なるお達しが事前にあって、そして昨日はめでたくプレゼント交換と相成りました。まるで日本の小学生のようです。
 私が当たったのは、とてもよく効く、飲んだら目がばりばりにさめるという漢方的な健康ドリンクです。「もっと働け」という見えざる力がくじ引きに働いたのでしょうか。

 先日の「kenji」さんの件ですが、これ以上個人について書くのはまずいような気がしたので、私が衝撃的だと感じた事実を一つだけ記載して終わりにします。「kenji」さんは女性でした。

2003年12月21日

(HK)taikonotatsujin wakuwakuanimematsuri

 この前、PS2のソフトの広告がMTR(地下鉄)に貼ってあって、上記の文字が書かれていました。一体何人の香港人が一読してこのタイトルを覚えられるんでしょう。午前中に書いたblogもあります

(HK)イングリッシュ・ネーム?

 多くの香港人はイングリッシュ・ネームを持っています。IDカードにも記載される公的な名前の一部です。普段呼び合うのに中文の名前の代わりに使うのは、日本のように名字の種類が多くないせいかもしれません。例えば張(Cheung)さん、黄(Wong)さんなんて鈴木・田中以上にごろごろしているので、とても呼びかけには使えないのです。かといって、Michaelのようなメジャーどころのイングリッシュ・ネームを選んでしまうと、また重複は避けられないので、結局名字との組み合わせ——Michael CheungとかMichael Wongとか——で呼ぶことになります。
 そのイングリッシュ・ネームの話題ですが、どうも最近来た新入社員の中に「Kenji」なるそれをもつ男性がいるらしく、日本人の間で噂になっています。メールのあて先の中に入っていただけなので、誰が「Kenji」なのかは謎なのですが。「kenji」ならもはやイングリッシュではないでしょう。ぜひとも会って、名乗るに至った経緯を問いたいところです。

2003年12月17日

(HK)髪を切りに

 香港のローカルの、美容院というか床屋というか、髪を切ってくれるところでは完全な分業制になっています。髪を洗ってくれる人と切ってくれる人は別です。ちなみに店に男女の別がないのも普通で、だからでしょうか、ひげ剃りはありません。
 日曜日に散髪に行ってきました。髪を洗う時は日本でいうところの美容室スタイル、いすを倒して仰向けになって洗うかたちをとります。その状態だと作業している人とばっちり目が合ってしまうので、日本では顔の上にタオルを乗せ、見つめあって気まずくなるのを防いだりしますが、香港ではそんなことはなく。
 この前はたまたま係の人が日本語をちょっと知っている人だったので、洗髪中質問攻めに遭ってしまいました。曰く、Aikoだの加護だのKinki Kidsだのを知っているか、と。今思い出しても無茶苦茶な組み合わせです。
 彼が話し続けたかったのか、それとも切ってくれる人が忙しかったのかわかりませんが、結局30分近く髪を洗われ続けながら話をしたのでした。

2003年12月9日

(HK)madokaともう一人の有名人

 今いる会社で中途採用をすることになって、面接なぞしています。香港では基本的に仕事に関してドライな考え方——給料が高い仕事こそが良い仕事——の持ち主が多いと聞いていたのですが、実際その通りで、20代でも数回の転職が普通のようです。
 それは置いておいて、書類をぱらぱらとめくっていると、ある応募者のメールアドレスに目が留まりました。アットマークの前が「まどか」とローマ字読みできるのです。頭をひねってみても、英語でも広東語でもなさそうですし……。応募者は彼、つまり性別は男でした。
 ここに至り私が出した推論は「madoka=日本のアニメかなんかのキャラクター」です。たいへん好きなので、自分のアドレスにしてしまった、と。この意見を他の日本人に披露したところ、「AV女優じゃないの?」という返事が返ってきましたが。
 実際に彼と面接をした結果、その雰囲気から私は自説の確かさに自信を深めました。けれども彼に直接聞くことはなかったので、推論の域を出なかったのです。

 さて、話はここで終わらなく。ローマ字読みするともっととんでもないことになる奴が来たのです。彼は日本でも簡単に取れる有名どころのフリーメールのアドレスを持っていて、アットマークの前がtakako_tokiwaとなっていました。いやもう、こんな場所でそんな方にお会いできるとは思ってもいませんでした。というか本物の彼女は香港の映画に出たりもしているので、こちらでも有名なのでしょう、きっと。
 さすがに今回は面接の最後で聞きました。彼は気付かれたことにかなりびっくりした様子で、少し照れながら、彼女の映画はすべて見ている、と熱心なファンであることを告白しました。
 おかしなことが起こるものです。というより、求職期間中にそんないいかげんなアドレスを使うなよ、と思ってしまうのがどうも几帳面な日本人的特性のようです。

2003年12月7日

(HK)ジャパニーズ・カラオケにて

 紺さんのマルヒニッキに反応して、そこの掲示板に「おどるポンポコリン」にまつわる書き込みをしてきたところです。
 香港の、女の人が横で水割りを作ってくれたりするようなカラオケ屋に行ったところ、カタコトの日本語で「『おどるポンポコリン』を一緒に歌おう」とせがまれたというのがその内容です。まあ、彼女たちの営業努力は本当にすごいですね。例えば『TSUNAMI』なんかだと全員が既習なんじゃないでしょうか。
 というのも『TSUNAMI』をうたうオヤジが多すぎだからです。いかにも歌うではなく唄うが適当なオヤジたちが、若いふりをして自己満足げに熱唱しています。
 店はカラオケボックスではないので、カラオケ機器を店にいる他の客たちと共有しています。ですから他のグループの歌も聴く羽目になるのですが、どのグループにも必ず『TSUNAMI』をうたう奴がいて。うたっている本人は気分いいかもしれない、でもこっちは飽き飽きです。
 後『地上の星』をうたう奴ね、これもいやですね。香港で色々大変な目にあっている自分を『プロジェクトX』の主人公たちと重ね合わせて慰めているだけなんじゃないの、とうがって見てしまいます。
 結局のところ、店にいる間心の中でこうやって毒づいているのは、心底ジャパニーズ・カラオケに行くのが嫌だからです。でも最高人民たちが好んで行くので、しばしばお供せねばならず、そして少なからぬ金額を払わねばならず。私と同世代の同僚たちはみな同じような気持ちを持っていて、支払いをpunishment payつまり罰金と呼んでいます。
 でも改めて考えて見ると、客が次々と入れ替わっているにも関わらず、常に三十人ほどの日本人が客として入っているというのは、相当奇妙な気がします。れっきとした香港なのですが。

2003年12月3日

(HK)半島酒店のアーケードにて

 香港の九龍側にあるペニンシュラホテル(半島酒店)はたいそう高級なところらしいと聞きます。その高級感や知名度ゆえに非常に日本人に大うけなんだそうです。私も先週末初めて足を踏み入れました、といってもアーケードでの買い物に付き合ったのみで。そこでいやなタイプの日本人を見てしまいました。
 彼女は一人でペニンシュラ印のお菓子屋を訪れていたのですが、その間片時も電卓を離しませんでした。彼女は店の中を一通り見て回り、カウンタの向こうに置かれている商品を買おうと決めたようです。ところが応対の店員さんが出てきても、その商品を無言で指さすことしかしませんでした。今思い出すと、彼女は全く口をきかなかったので、ひょっとしたら日本人じゃなかったのかもしれません。
 1HKドルは約15円です。そんな簡単な計算ぐらい暗算でスマートにやりましょうよ。両替したときには16円とか17円とかだったのかもしれませんが、そういうことを気にするなら20円で計算すればいい話で。その程度の誤差が生じたとしても、十分買い物できると私は思います。
 英語が話せなかったら日本語を使いましょうよ、「これください」って。それで十分に購入の意思は伝わるでしょうし、日本人がお得意様なんだからもしかすると通じちゃうかもしれないし。こういうケースって、いわば安全網がしっかり張ってあるわけで、絶好の英語の練習の場になると思うのですが。