2004年11月29日

(HK)深水{土歩}[しゃむすいぽ] (2)

 皆様の快適で愉快なデジタル・ライフに貢献するべく、香港で働いている(あ)です。とはいっても、私個人はそんなデジタル・ライフは全く送っていないのですが。

 仕事上、どうしても磁石を買わなくてはいけなくなりました。だれかが拝借していったのか、それとも私がどこかに置き忘れたのか、いつも使っていたものが見当たらなかったのです。少し磁力が強いものを使っており、加えてそれ専用の工具まで作ってしまっていたので、同じものを手に入れる必要がありました。そこで同僚に、どこで買ったのかを尋ねたのです。
 返ってきた答えは「深水{土歩}」[しゃむすいぽ]でした。日本のマニア旅行客にはおなじみの香港の電気街です。地図をコピーしてきて店の場所を詳しく聞くことにしました。
 ところが、どうも要領を得ません。
「たぶんこの辺だと思う」
「日本人のお前には見つけられないかもしれない」
 などとネガティブな情報を言うのです。

 そんなことを言ったところで行動しないと始まらないので、地図を見ながらその場所、鴨寮街という通りを訪れました。来てすぐに気付きました。通りに並んでいるのはお店というような立派なものではなく、雨がしのげる屋根と机だけからなる露店だったのです。日本の縁日とかお祭りとかで見かけるやつです。しかし、ここ香港ではこういった露店も建物の中にある店と変わりなく毎日普通に営業しているのです。
 これなら確かに同僚たちが心配するのも分かります。急に移転していたり、なくなったりしていても全く不思議じゃない雰囲気です。

 端から一軒ずつ露店を観察していくと、同僚が「この辺」と語ったところに確かにその店はありました。おじさんが二人で店番をしていました。黒っぽい焼き物の表面を持つものや、ピカピカ光る金属で覆われているもの、大きいものや小さいもの、様々な磁石が机の小箱に整理されて置かれています。というか何とその店では磁石しか取り扱っていませんでした。お客もいませんでした。

 結局そこで同じ磁石を見つけて25個購入しました。25HK$(300円)でした。仕事で使うものなので領収書をもらいましたが、書類を書くのが面倒くさくなって自腹で払ったままです。机の中に未だに入っているその領収書を見ると、おじさんたち二人があの商売でどうやって生活をしているのか気になります。そして香港は奥が深いと改めて思うのです

2004年11月28日

(HK)風の強い日

 いろいろ検索してみましたが、ピーコさんが「おしゃれとは季節を先取りするものだ」と語ったという史実を確認することはできませんでした。

 本日、街でマフラーをしている人をたびたび見かけました。香港においては、一番寒い季節でもマフラーは不要だと断言できます。それゆえにこの行為は季節の先取りでは決してなく、ピーコさんのもうひとつの名言「おしゃれとは忍耐である」を実践しているものと解釈するのが妥当かと。実際、香港の人全てが寒がりなわけではないので、いまだに半袖の人もいます。

 改めて香港は分布のレンジ(範囲)が広いんだなあ、と認識しました。食べ物が典型的な例で、外食にしても一食20HK$弱(今は円高なので200円程度)から、1000HK$ぐらいまで選択できます。

 ちょっとまじめなことを書くと、香港にいる日本人の中には、そういう安い食べ物を評する際に「ごみみたいな」とか「泥水みたいな」という言葉を使う人がいて、それはどうかなあと思うのです。他の製品についてだったらどんな形容を使ってもいいと思うのですが、こと食べ物に関しては汚い言葉が許せないのです。

2004年11月27日

(HK)ヨン様ではなく

 縦縞のスーツを着てサングラスをした人が、携帯のカメラをかざす女の人たちに向かって右手を挙げています。この写真が載っていたのは香港のフリーペーパー、そして私のねたの源である都市日報で、タイトルは『俊哥抵日7000師{女乃}迎候』となっています。そうか『俊哥』って言うんですか、裴勇俊さんのことを。
 Googleで俊哥を検索してみたら、『哥哥』でお兄さんという意味だとか、『師{女乃}殺手』でおばさんキラーになるだとか、かなり勉強になりました。親しみを込めて『ジュン兄さん』と呼んでいるんですね。

 『哥』で思い出したのですが、こういった添え字みたいなものは他にも色々あって、中でも有名なものとして『仔[じゃい]』があります。男の子っていう意味です。『哥』よりも幼いイメージです。
 例としては、『華仔』『Mo仔』などです。前者は歌手のアンディ・ラウで、後者はニモです、ええ、カクレクマノミの。
 ていうか、どうしてそのままのニモじゃダメだったんでしょうか。タイトルも『Finding Nemo』から『海底奇兵』と、ドラえもん映画みたいに変わってしまっていますし。

2004年11月26日

(HK)今日も普通の一日でした。

 昼食だとか、ミニバスだとか、いつも同じようなことについて書いています……。

 今朝、ミニバスに乗っていると、斜め前がスーツを着た日本人のおじさんでした。おじさんはそれはそれは熱心に週刊朝日を読んでいらっしゃいました。そういった大人系週刊誌を私はまともに読んだことはないんですが、香港で読むほどのものなんでしょうか。いや、日本の新聞(衛星版)を取っているというのだったら、理解できるのですが。新聞だとそれなりに最新の情報を仕入れることができるので。

 なかでもおじさんが時間をかけていたのは「東京通勤圏のどの駅で一戸建てを買えばいいのか特集」でした。興味あるんでしょうねえ。私なんかはもうすっかり弾けて、安定からは程遠い社会人を香港でやっているので、持ち家だとか年金だとか、そういうものに対してはつい斜めに構えてしまいます。まあ、おじさんは、職場のローテーションで3年ほど香港にいて、任期が終わったら日本に帰るような、そういう仕事なんでしょう。

 降りるバス停が近づいてきたので、下手な広東語でミニバスを止めました。日本人の広東語だと気付いたのでしょう、おじさんは振り返って私のほうを見ました、そして驚いている様子でした。私は私服を着ていましたし、「職場のローテーション」で派遣されてくるような日本人と比べるとかなり若いですから。その証拠に、シャツのすそはきちんとズボンの外に出していましたし。
 おじさんは「香港で何やってるんだ、こいつ」という顔でした。私はひねくれ者ですから、そういう顔をされるとうれしくてうれしくてたまらないのです。

2004年11月24日

(HK)まずはカレンダーの話から

 日本の皆様、勤労いつもお疲れ様です。まあ私なんかは当然休みなどなかったんですけどね。いや好きで香港にいるんで、なぐさめなんていらないです。ええ強がりです。

 香港の12月の休みはカレンダーによると12月25日(Christmas Day)と27日(The second day of Christmas Day)だそうです。ところが25日は土曜日なので効果が希薄であり、27日は月曜日ですがもう既に会社が出勤日に変えてしまいました。旧正月の国なので12月とはいっても31日までしっかり働きます。こんなことを書いているとせつなくなってきます……。

 さて、ご存知の人はご存知かもしれませんが、現在香港の空港近くでディズニーランドが建設されています。本日の都市日報によると、いよいよ来年の9月12日にオープンすることが決まったそうです。この日付は風水で決めたとか書かれていましたが、それよりもむしろ、今年行われた大きな選挙の投票日と同じなので、香港の人々にとってはそれとの関連で覚えやすいのではないかと。なんせ今年の9月12日の選挙に際しては、2ヶ月ぐらい前から大規模にキャンペーンを張っていましたから。
 例えばこんなCMがありました。

 結婚式にむかう新郎新婦家族親族友人たちが、新郎新婦の乗る飾り立てられた車のなぜか『ナンバー』に注目し、それが『912』になっているものだから、「それじゃあ選挙に行こう」と語り合う。
 で、最後に全員で912[がお、やっ、いー]と唱和するのです。

 このCMに限らず、香港政府が作るものには濃い香港っぽさを感じることがあります。この前見たのは、観光客を暖かくもてなそうというキャンペーンでした。さすが観光が生命線なだけあります。CMには日本人の若い女性も観光客として登場しており、頭を深く下げて日本語で「はじめまして」と挨拶していました。なかなか好感のもてる方でした。ああいう人がミニバスに乗っていて、どうやって降りたらいいか困ったりしているといいんだけどなあ。

2004年11月23日

(HK)2004年11月22日の1000字日記


 夜10時にバスターミナルにて、いつものように止まっているミニバスに乗
り込んだところ、料金箱の前を二人の女の旅行客が占拠していた。運転手に英
語で何やら話しかけている。旅行客だと分かったのは、彼女達がスーツケース
と観光地図を持っていたからだ。お釣りをくれと彼女達は頼んでいるようだが、
この香港、そんなものはタクシー以外では出てはこない。
 彼女達は東洋顔をしており加えて英語を使っていたので、日本人か韓国人の
どちらかだろう。判明しないうちは声をかけないほうがいいと考えた。いや、
彼女達の身なりが派手で、一人なんかは腕にイモリかヤモリのタトゥーなどし
ていたから、ちょっと見送ったというのが正直なところだ。

 ミニバスが動き出す。ターミナルを出て10数階建ての古いビル群の中を通
り抜ける。それらを眺めて彼女達はおしゃべりを始める。曰く、
「本当に来ちゃったね」
「洗濯物があんなに高くに干してあるよ」
「なんか上野みたい」
 どの辺が上野なのかは分からなかったが、日本人のようだ。それにしてもど
うやら香港は初めての様子で、なぜわざわざこのローカルな交通機関に乗った
のかは謎だった。特にこのミニバスは始発こそターミナルであるが、やがてど
んどんと都会から離れていくのだ。
 だから、いざ街から外れだしたら彼女達に声をかけようと決めた。何のこと
はない、彼女達は後ろに座っているのだから、振り返って、
「どこで降りるのですか、大丈夫ですか」
と尋ねればいいのだ。親切な日本人として普通のことだ。

 ミニバスは繁華街を通過していく。黄や赤や緑のど派手な看板が道路にはみ
出してぶら下がっている、典型的な下町だ。急に車体を左に揺らしてミニバス
が止まる。ドアが開き堰を切ったかのように客が乗り込んでくる。そんな状態
の中、彼女達は突然、
「降りよっか」
と言って、人の流れに逆らいながら降車していった。

 結局、声をかけることはなかった。まあ、二人連れで楽しんでいたようなの
で、しゃしゃり出るのは野暮だったかもしれない。次の機会、例えば女の人が
一人だけで、本当に困っている様子ならば話しかけたほうがいいだろう……。
 と、ここまで考えた時に、もし一人ならば独り言でもない限り日本語を使わ
ないだろうから、乗り合わせたとしても話をする機会なんて生まれないだろう
なあ、なんて気付き、その後、そんなふうに無駄に心配したり残念がったりす
る自分が滑稽に思えてきた。

2004年11月22日

(HK)「ケータイ刑事 銭形零」と「旅まにあ」を見る~その2

 先週 と同じ時間帯に同じように見ました。ひどい内容でした。

 『銭形零』のほうは一応推理仕立ての番組です。しかし今回は、
(アリバイ)ホシは足を怪我していたので殺人現場に行けない。
(真実)殺人の後で、アリバイつくりのために故意に怪我した。
というのがほぼ唯一のトリックというお粗末さ。

 『旅まにあ』は何と先週の再放送でした……。二週に一回しか新しい内容をやらないようです。

 いや何も娯楽なんて求めていないのです。ぼーっとテレビを眺めるという体験だけで構わなかったのですが、今日のBS-iではそれは叶わなかったのです。
 NHKも映るため「新選組!」も見られるのですが、連続ドラマを毎回きちんと見る、ということができない性質なので楽しむまで至らず。結局のところストライクゾーンが狭い自分に問題があるのです。

2004年11月21日

(HK)香港の日本料理屋

 今週は二回も飲み会が入りました。一回目は月曜日のG白河(仮名)さんの歓迎会で、もう一回は昨日、G白河さんと「最高人民」の顔合わせ的な会です。われわれ若手の間では、会社のお偉いさんを「最高人民」と呼ぶならわしになっています。

 酔った勢いで誰かが最高人民に、
「白河さんのイングリッシュ・ネームはG白河なんですよ」
と吹きこんでいました。当然、最高人民は白河さんに尋ねます、
「なんでGなの?」
と。白河さんはもじもじしていたのですが、別の方角から、
「まさか、彼女がGカップだからG、なんてことはないですよね」
と確認が入りました、ていうか先に回答されてしまいました。そして、ただにやける白河さん……。
 いじられキャラなんですね、きっと。

 この前1回だけと断っていたにも関わらず、こうしてここに書いてしまいました。普通じゃない働き方を選択してしまったために、ここしばらく新入社員なる存在を見てきませんでした。改めて彼を観察していると、自分が年を取ってしまったような気になります。


 白河さんはさておき、今週の二回の飲み会は両方とも香港の日本料理屋で行われました。そこでは非常においしい料理が提供されるのですが、実は異様な空間です。こちらに来て一年以上経ちますが、異様な空間であるということを忘れてしまったらまずい、と思っています。
 大抵そういう店は日本人??特に仕事がらみで飲んだり食べたりするような人々??のためにカスタマイズされています。日本にいても食べることのないような高級素材をわざわざ日本から直輸入していたり、ボトルキープのような習慣が展開されていたり。日本語のメニューしかないこともあります。企業は普通、私なんかよりももっと上の世代を香港に派遣するので、お店のお客もほぼそういう人々で占められます。そして代金もかなり高くなります。

 一緒に働いている同じ年代の香港の人に、本当の日本食を食べさせてくれと頼まれることがあります。しかし、今後の人間関係を考えると、そうした奇妙に高級な日本料理屋に連れて行くことは躊躇されるのです。

2004年11月16日

(HK)G白河(仮名)が来ました。

 自分の個人情報を極力伏せているわりに、こうやって他人をねたにするのはどうかと思いますが、一回だけG白河(仮名)について書きたいと思います。
 前回話題にした、Gカップとの噂の彼女がいる新入社員白河(仮名)が香港にやってきました。早速G白河と名づけられ、からかわれていました。でも、彼は否定も肯定もしないんです!!
「自分の彼女のことをカップで、つまり、物みたいに呼ぶのはやめてくれませんか」っていえば、それでその後誰も何も言わなくなるのに……。初対面の、それも上司や先輩ばかりだったから気を使ったのかもしれませんが、えへらえへらしていると相手は付け上がる一方ですよ。
 悪ふざけを止めなかった私もまあ同罪かもしれませんが、いややっぱり、あの局面ではちょっとは反発すべきだったと思います。ちょっと酔っ払いの(あ)からのアドバイスです。

2004年11月15日

(HK)「ケータイ刑事 銭形零」と「旅まにあ」を見る

 夏帆って書いて、かほって読んで、13才なんですか。13才だと平成生まれになるんですね……。
 今住んでいるところでは日本の衛星放送、BS-iとNHK2つの計3つがなぜか映ります。今日の午後、少ない選択肢の中からぼんやりBS-iを選んで見ていると、BS-iの看板ドラマであろう「ケータイ刑事」シリーズの女の子が夏帆さんに変わっていることに気付きました。BS-iはご存じない方が多いかもしれませんがTBS系の局です。私も香港に来るまで知りませんでした。
 調べてみると彼女はリハウスガールだそうで。かわいいことはかわいいですけども、万事ちょっとぎこちない感じがしました。リハウスのCMは見ていませんが、転校してきた日の朝に先生の横に立って自己紹介をするという演技だったら、十分な雰囲気をかもし出せるのではないかと。それだけだとかなり限定的ですが。
 でも、あの歳で商売っ気ばっちり感をまわりに放つことができたなら、それはそれで怖いものがあると思います。
 結論として、私はこのように冷静に彼女を見ることができたのでちょっと安心しました。13才ですから、彼女は。

 続けて情報番組「旅まにあ」を見ました。たまたま香港飲茶best3なる特集をやっていました。やっぱり有名なお店を紹介するもんだなあ、と思いました。どうでもいいですが「九龍」(地名です)を「クーロン」と読むのだけは恥ずかしいからやめて欲しいです。そうやって使う人がいるので、一部の日本人が間違えて覚えてしまうんです。こちらでは誰も使わない・理解できない音です。
 九龍はkowloonと綴り、英語式だと「カオルーン」の発音が普通です。一方広東語だと「ガウロン」になります。このように同じ地名を二つの発音で呼ぶというところが香港っぽいところです。MTR(地下鉄)に乗っているとさらに標準語(北京語)でも車内放送されるので、kowloon stationは「カオルーン」「ガウロン」「ジュウロン」と三つの発音で呼ばれています。

 おおっと、予期せずに香港在住者が書くページっぽく文章を締めることができましたよ。

2004年11月14日

(TEXT)とりあえずの成果報告

 「書こうと思います」とかなんとか、このページで意思表明することは多かったのですが、実際のところぜんぜん書いてはいませんでした。
 けれども、今日は無性に書きたくなったので、ここの更新を放って久しぶりにえいえいと綴ったところ1083字になりました。
 さて、とりあえず寝て、明日冷静な目で読み直してみることにしましょう。

2004年11月13日

(HK)あの料理もきっと香港の名物に違いなく。

 おすすめランチメニューは黒板に漢字だけで書かれています。いつものように分かる字だけつまみ読みして、適当に注文しました。出てきたのは平皿の不思議な料理でした。ご飯が型に入れてひっくり返したような状態で盛り付けられていて、その横に卵をつけて揚げた白身魚が添えてありました。そして両者にはホワイトソースがかかっていました。

 その店ではフォーク、ナイフ、スプーンと三種類全部用意してくれるのですが、今日のような料理の場合私はスプーンだけをつかって食べてしまいます。横着にスプーンを立てて白身魚を切り分けたりしていると、横の席に外人さんが座り私のランチを指差し「同じのをくれ」と店員に注文したのです。

 私は今日のランチをおいしく頂きました。普通だったらそれで十分なのでしょうが、この日は自分が料理に満足しきっていたためか、外人さんがその「無国籍料理」をどう食べる・評するのかということが妙に気になりました。お店の人のような気分でちらちらと観察してしまいました。


2004年11月12日

(HK)それはかなしく響いた、及びマクドナルドで発見した男の子について

 朝7時半、昨日はいていたズボンから急いで財布を引っ張り出し、シャツのボタンを留めつつ足先をぐりぐり回してスニーカーを履いて、実のところそんな履き方だと踵の部分が傷み後々いやな思いをするのですが当然そんなことを気にする余裕なんかなく、ドアを勢いよく開けて飛び出していきました。でも二三歩進んだところでふと気になったので後ろを見ると、ドアがゆっくりと閉まっていく様子で、そして最後にカチャンと音がしてドアが元の場所へと収まりました。そこで私は気付いたのです、部屋に鍵を置き忘れたことを。急いで駆け寄ったのですが、オートロックのドアは私を冷たく拒絶しました。
 結局一日やりきれない思いを抱えたまま仕事をして、夜帰ってから業者を呼び250HK$(4000円近く)代償を払ったのです。

 そうしてなんとか家の中に入りました。その時まだ夕食は食べていなかったのですが、精神的に疲れてしまい外で食べるのがとても億劫に感じられたので、かといってうちで作るなんて決してありえない人なので、テイクアウトをするためにマックに向かいました。
 訪れてみると、その店は客も少なければ店員も少ないという状態でした。一人の店員がさばくのを数人の客が待っていました。私の前には小学生くらいの男の子がいて、見ると手になにやら紙を持っています。自分の番になるとお店の人に無言でその紙を手渡しました。「サラダが欲しい」というようなことがそこに書かれていたようです。

 ああ、日本人の男の子なんだなとその時直感で思いました。ここらは日本人が多く住む地域であるというのも理由の一つですが、

母:ねえ、ちょっと一品足りないからサラダでも買ってきてよ。
息子:(ゲームボーイアドバンスから目を離さずに)やだ。英語わかんないし。
母:ほら、この紙見せれば買えるから、行きなさいよ、いつまでもファミコンやってないで。
というようなストーリーを想像したのです。
(どんなゲーム機をも「ファミコン」呼ばわりする、なんていうのは今時の母親っぽくないかもしれませんが)

 終始黙秘を続けていた彼ですが、やがてマックはやはりマックであるがゆえに店員から「飲み物はいかがですか」なんて聞かれてしまい、しばらく固まった後に大きく全身を振って拒否していました。
 観察を続けながら私は自分が小学生だったころのことを思い出し、彼の気持ちをなんとなく推し量ることができました。好きでもないのに連れてこられた香港に順応するということを、わけもなくカッコ悪いことのように感じているんじゃないでしょうか。また、そういう境遇の男子でつるんで、みるみる英語を吸収して生活を楽しみだす女子のことを悪く言ってみたり……。

 いやいや、カッコ悪いことも客観視してみたら面白いことなのだよと、今の私なら思えるのです。怪しい広東語でオーダーするだけでマックのお姉さんを手玉に取れるんだよ! 君の歳ならできる!! と熱く彼に語ったならば間違いなく敬遠されるでしょうが。

2004年11月11日

(HK)匈牙利牛肉飯

 いつものように食事ねたです。上のメニューをレストランで見つけました。一文字目はよく分からなかったのですが、二文字目と三文字目でなんとなく「がり」と読めました。何とか「がり」、うーん……、と考えて、「ハンガリー」とオーダーしたら当たりでした。とろみのついた炒めた牛肉が、ご飯の横に添えられて出てきました。
 ネットで検索してみると結構驚かされました。今日は感謝の意を込めて、リンクを張ります。



ハンガリーのドメイン名とその説明より。
「匈牙利」、即ち、「匈奴の土地」という(「匈」は意訳、「牙利」は - garyの音訳で、発音は「シオンヤリ」。
 そうですか……。たとえ『匈』の音が分かったとしても『ハンガリー』という発音にはたどり着けなかったようです。それよりも歴史をしっかり学んでいないとだめってことですか。



ハンガリー政府観光局より。www.hungarytabi.jpというurlも素敵です。
 有名なハンガリー料理を紹介する前に、ひとことお断りしておかなければならないことがあります。それは、伝統的ハンガリー料理は、特に最近の料理に慣れた人には、鉄のような意志を持つと人だけにしかお勧めできないということです。なぜなら、ハンガリー料理は、あまりにも「危険な魅力」に満ちているため、その人が長い時間をかけて築き上げた食への哲学がもろくも崩れ去ってしまうからです。
 そうですか……。香港のまがいもの(多分)を食べていい気になっていてはいけないんですね。 追い討ちをかけるように、
 ジプシー音楽が、ナイフとフォーク、皿とナプキン同様、ハンガリー料理のテーブルには欠かせないことをお忘れなく。
 次回気をつけます……。 ていうか、ジプシー音楽って?

2004年11月8日

(HK)情報化社会とGカップ

 次の次の月曜日、私たちの職場に本社から日本人の新人が来るそうです。現在のところ私を含む「昼食三人組」が日本人最年少なのですが、今年大学を出たばかりという彼は私たちをダントツで上回るというか下回ることになります。新人が来るなんていうのは滅多にないことなので、三人組の一人は本社に張り巡らせた情報網を活用して、彼について聞き込みをしたそうです。社内報に載った彼の写真がまず戦果として得られました。地味目のまじめそうな顔でした。その後も調査を続けると、なぜか「彼の彼女がGカップである」ということが判明しました……。

 昼休みにその報告を受け、私は絶句してしまいました。そして頭の中にはたくさんの疑問が駆け巡りました。

  • 入社したばかりなのに、なぜ彼女の情報が会社に漏れているんだろう?
  • うっかり彼女と会っているところを、会社の人に見られたのだろうか?
  • 見られただけなら、サイズが正確に把握されているわけはないし……。
  • もしや、そういう話を飲み会とかで暴露するような人間なんだろうか……。
  • まだ「彼女」なんだろうから、日本に残してくるんだろうなあ……。
  • 彼って結構地味な顔なのに……。
  • Gカップってどれくらいだろう……。
  • くっ、こんな下劣な想像を私にさせるとは……なぜ本社の人間はわざわざそんな情報を伝えてきたんだ?

 三人とも何か色々考えていたようで、「Gカップか……」と呟いた後みんな押し黙ってしまったのです。無言で凍鴛鴦をしきりにかき混ぜたりして。

 まだあと一週間ほどあるのにもかかわらず、三人ともしきりと彼のことを話題にします。さすがにもう誰も「G」のことは口にしませんが。でも私なんか彼の顔を見たとたん「Gカップ……」と想起してしまいそうで、今から心配で心配でたまりません。

2004年11月7日

(HK)鴛鴦と陰謀

 制度上は週休二日なはずなのに、土曜日に会社に行くことがごくごく普通になってしまっている現状は悲しむべきことでしょう。それでも私は今日、のんびり昼過ぎに行ったので、同僚と一緒に昼食を取ることはありませんでした。以下は会社にてその彼らから聞いた話です。

 朝早くから勤勉に働いていた彼らも、さすがに土曜日なので気分転換というか違ったことがしたくなったそうです。それで昼食の店を開拓しにちょっと遠くまで出かけ、よさそうなレストランがあったので入ったとのことです。思いっきりローカルで日本人は行かないであろう地域です。

 ランチを探しオーダーした後のことです。ある意味儀式にも近いのですが、彼らは鴛鴦をその店でも頼みました。儀式ならば呪文に相当するその一言を全て言い終える前に、何とお店の人に「おまえら少甜だろ?」と確認されたそうです。

 別の日本人が実は来店していて、少甜を頼んだことがあったのかもしれません。それとも「怪しい日本人三人組は決まって凍鴛鴦少甜をオーダーする(そして店員の反応を楽しむ)」という情報がこの界隈の飲食業界に広まっているのだ……とか、挙句の果てに私たちはそんな陰謀を想像したりして楽しみました。偶然だといってしまえばそれまでなのですが、ちょっと壊れかけの気分の日には些細なことで盛り上がってしまうものです。

(HK)白色巨塔と101次求婚

 あちこちに書かれていることですが、日本発のコンテンツは香港でも好評です。ただ、日本製という理由だけで流行っているわけではなさそうです。面白いものだったらきちんと受け入れる、という姿勢に見えます。現にこちらにも韓国ドラマがたくさん進出してきています。

 そんな中、私が電視節目表=テレビ欄で注目しているのはタイトルに書いた二つのドラマです。白色巨塔のほうは鳳凰衛視中文台という衛星放送もしくはケーブルテレビで放映されています。この前たまたまチャンネルを『回して』いたら(21世紀においてこの表現が自然に出てしまうというのはどうでしょう?)、この番組にばっちり合ってしまいました。というのもこの局では一日に何回も再放送をしているからなのですが。そこでは唐沢さんが違和感ばりばりの中国語で話していましたので、これは吹き替えているんですね。

 一方、101次求婚のほうは白色巨塔よりもだいぶ昔で、それこそ『トレンディー』なんて称していた時代の化石なはずですから、どうしてわざわざそんなに古いものを買い付けてくるのかと疑問でした。私は一度も見たことがないので、武田さんのあの有名な台詞ぐらいしか認識がないのです。ああいうのがお好みなんですか? と思ったりしたものです。ちなみに放映されているのは亞視本港台、香港で二つしかない地上波の一つです。

 私は電視節目表を都市日報で見ます。しかしこの節目表、日本のように豊富な情報量があるわけではありません。日本のラジオ欄を想像してもらえば雰囲気が伝わると思いますが、時間と番組タイトルの主に二つからなるシンプルなもので、それに時々番組の写真がついたりする程度のものです。ですから実際のところ私も毎朝チェックしているわけではなく、ページをめくるついでに眺めるといったところなのですが、この前の金曜日には驚かされました。101次求婚の下に写真が添えられていましたが、そこでは見たことのない角刈りの典型的中国人が道路の中央に立ち、両手を広げて車の往来を妨げていたのです! それで初めてリメイク版だと思い至ったのです。

 この記事をポストするにあたって検索かけてみたのですが、私が知らないだけで、101次求婚ってあちこちでリメイクされつつあるようです。

2004年11月4日

(HK)ミニバス事故る

 先週の土曜日のことです。長いこと待った後ミニバスに乗り込むことができたのですが、道路が混雑していてちっとも前に進みません。あせる理由もなかったので私は一番後ろの席に座ってぼんやりと外など眺めていました。すると突然ミニバスがエンストを起こして止まってしまったのです。急に運転手がドアから前へと飛び出ていきます。満員の乗客たちは立ち上がって前方をのぞこうとします。私も人々の頭をかわしつつ見てみると、バスの前にタクシーが止まっていて、二台の車の間で運転手同士が話をしているようでした。どうやら、のろのろ運転の間にミニバスがタクシーに接触してしまったようです。
 しばらくすると運転手たちはそれぞれの車に戻りました。でもすぐに、それは落ち着いたところに車を移動させて話し合いに集中する目的だとわかりました。ミニバスの運転手は若い女の人でしたが、いらいらをドアにたたきつけるようにして再度外へと向かいます。

 私は確かに急ぐ理由はなかったのですが、この後どうなるのだろうという不安がありました。いや不安といっても、せっかく乗れたミニバスを逃すことになると面倒くさいな、とか、先払いで払ってしまった運賃はどうなるのだろう、という程度のことですが。連れがいる乗客たちは好き勝手にいろいろ想像しあっている様子です。
 話し合いは15分以上は続いたと思います。たまたま白バイが通りかかって、話し合っている運転手たちの間に割って入ったりしましたが、結局終わったのはそういうきっかけとは関係がないようでした。女の人はミニバスに一度戻って、かばんを引っつかんでそして何やら取引らしきものをして、その後ようやく運行が再開されました。

 再開直後、運転手と乗客の一人が会話をしていました。彼女は「やっぱあ」と大きな声で吐き捨てていました。「やっぱあ」はたしか100のことですから、私の想像では自腹で100HK$(1000~2000円)払って示談したのだと思います。ミニバスが車線を変えた際に、タクシーの後部に接近しましたが、傷は見当たりませんでした。示談の金額が安いか高いかよく分かりませんが、4.3HK$の運賃を払った満員の乗客たちは誰も降りずにじっと待っていたのです。

 この話、少し続きがあります。彼女はその後乱暴にミニバスを操りました。乗りながら私はちょっと彼女に同情したりしていました。すると私が降りるバス停が近づいてきたのです。
 私は油断していたのだと思います。いつも降りる人がたくさんいるところなので「降りますコール」をしなくても大丈夫だとたかをくくっていました。ところがその日に限って降りるのは私だけで、彼女に「降りる人はいないのか」と急き立てられた末に「有[やう]!」と叫びながら席を立って小走りなんかしたものだから、タラップから降りたところで勢いがつきすぎて前のめりに派手に転んでしまいました。災難は全て私のところに来ていたようです。周りの視線を痛く感じました。それでも立ち上がるとき意図せず正座の姿勢になったので、瞬時反省などしてみました。

2004年11月3日

(HK)美国横断超級智力競賽

 最後まで勝ち残って見事無人島をゲットしたり、はたまた途中でスタッフに置き去りにされて「帰国?」というテロップを流されたりするためには、以下の情報が必須だと思われます。上のタイトルはそれっぽく(あ)が考えましたが、これ以降は香港が誇るフリーペーパー「都市日報」による大統領選挙特集に掲載されていたものです。ただし香港での名前なので本当の中国語(普通話)とは違うかもしれません。

(アメリカ50州、アルファベット順)

Alabama     アラバマ      亞拉巴馬
Alaska     アラスカ      阿拉斯加
Arizona     アリゾナ      亞利桑那
Arkansas    アーカンソー    阿肯色
California   カリフォルニア   加利福尼亞
Colorado    コロラド      科羅拉多
Connecticut   コネティカット   康涅狄格
Delaware    デラウェア     特拉華
Florida     フロリダ      佛羅里達
Georgia     ジョージア     喬治亞
Hawaii     ハワイ       夏威夷
Idaho      アイダホ      愛達荷
Illinois    イリノイ      伊利諾伊
Indiana     インディアナ    印第安納
Iowa      アイオワ      艾奥瓦
Kansas     カンザス      堪薩斯
Kentucky    ケンタッキー    肯塔基
Louisiana    ルイジアナ     路易斯安納
Maine      メーン       緬因
Maryland    メリーランド    馬里蘭
Massachusetts  マサチューセッツ  麻薩諸塞
Michigan    ミシガン      密歇根
Minnesota    ミネソタ      明尼蘇達
Mississippi   ミシシッピ     密西西比
Missouri    ミズーリ      密蘇里
Montana     モンタナ      蒙大拿 
Nebraska    ネブラスカ     内布拉斯加
Nevada     ネバダ       内華達
New Hampshire  ニューハンプシャー 新罕布什爾
New Jersey   ニュージャージー  新澤西
New Mexico   ニューメキシコ   新墨西哥
New York    ニューヨーク    紐約
North Carolina ノースカロライナ  北?羅莱納
North Dakota  ノースダコタ    北達科他
Ohio      オハイオ      俄亥俄
Oklahoma    オクラホマ     奥克拉荷馬
Oregon     オレゴン      俄勒岡
Pennsylvania  ペンシルバニア   賓夕法尼亞
Rhode Island  ロードアイランド  羅徳島
South Carolina サウスカロライナ  南?羅莱納
South Dakota  サウスダコタ    南達科他
Tennessee    テネシー      田納西
Texas      テキサス      徳克薩斯
Utah      ユタ        猶他
Vermont     バーモント     佛蒙特
Virginia    バージニア     弗吉尼亞
Washington   ワシントン     華盛頓
West Virginia  ウエストバージニア 西弗吉尼亞
Wisconsin    ウィスコンシン   威斯康辛
Wyoming     ワイオミング    懷俄明


?は香港では頻出の「卡」です。
「カ」の音もしくは「カード」を意味します。「卡拉OK」=カラオケが前者の代表的な使い方です。

2004年11月1日

(HK)楽天vsロッテ、及び蛇足ながらテクノロジーについて

 「楽天vsロッテ」に気付いたのは先週で、これは中国語圏にいる日本人ならばだれでも「ははーん」となることなので、早い者勝ちの気分で書きます。実は「ロッテ(企業)」の中国名が「楽天」なのです。「楽天小熊餅」=「コアラのマーチ」といった感じで。
 だから楽天がパ・リーグに入ると、中国語圏ならロッテ対ロッテの紅白戦であり、例えて言うなら「コアラのマーチ」と「パイの実」が激しく切り合うといった感じになりませんか? なりませんか、やっぱり。でも告白すると私はどっちも好きです。

 なんか最近の流れだと楽天で決まりのようです。語りつくされた話題だとは思いますが、ホットだったときにこのwebを再開していなかったので遅ればせながら少し書きたいと思います。

 今手元に二冊の雑誌があります。十月の上旬に日本に帰国したときに買ってきたものです。どちらの雑誌もライターの記名文章の中で楽天が設置しようとしている「経営諮問委員会」について触れています。「経営諮問委員会」というのは大企業の社長さんたちが球団のご意見番を買って出る、という仕組みのようです。
  • 雑誌A
     さらに決定的に「やだな」と感じるのは、申請書にこれ見よがしに書かれている”経営諮問委員会”の存在だ。このリストをしみじみ見ていると、野球って庶民のスポーツではなくて、(略)おいおい、社長たちが野球をするわけじゃあないんだからさ、とカラミたくなってくる。
  • 雑誌B
     錚々たるメンバーはさながら財界の総意として三木谷をプロ野球ビジネスの新たな担い手として送り込んでいるかと錯覚させられるほどである。

 どちらの意見に頷くかで、自分の社会的なポジションがわかるのではないでしょうか。
 私はいままで雑誌Bを結構買っていたのですが、こういう記事を読んでしまうと「しょせんエライ人の立場を代表している雑誌なのか」とがっかりし、そして買っている自分が恥ずかしくもなり、今回はあえて名称を伏せました。わざわざもったいぶって「錚々(そうそう)」なんて難しい字使うなよ……。

 あともうひとつ、この騒動での「IT」という言葉の扱いもちょっと嫌な感じがしています。私は理系人間ですが、両社とも「IT」のT、Technologyには程遠いような気がしたのです。コンピュータやインターネットに疎いおじさん連にカタカナ言葉を浴びせかけ、混乱させ、そしてお金をとっているような気がします。「難しいことをみんなができるような形にして提供している」という面は理解できますが、やっぱり技術というからにはエンジニア的わくわく感をとことん追い求めてほしいものです。

 当ページの趣旨から外れてうだうだ書いてしまいました。若いのにたくさんの収入を得ている人々へのやっかみでしかないことは十分承知しております。