2007年12月9日

(HK)大家来襲

 ネットは引き続き好きですが、どうも他人様のを読んでいるうちに程よく疲れてしまって、いつもそれで終わってしまっています。「書こう」という気になかなかならないです。ですが、とりあえず当地で普通に元気にやっております。


 この前、うちの部屋に大家(オーナー)がやってきました。数週間前に不動産屋から、今住んでいる部屋の契約の継続ができなかったことと、今回のオーナーの訪問について、連絡を受けていたのですが。

 香港では部屋の賃貸契約は二年単位が普通です。同じ部屋に住み続けるためには二年ごとに契約を更新する必要があります。日本の事情に明るくないので厳密な比較ではありませんが、日本よりは貸し手に有利な状況のようです。というのもここではオーナーが延長しないと言い出したら、借り手は退去せざるを得ないので。また、最近のように景気上昇局面だと、更新に際して家賃の値上げを言い渡されることも多いです。そんなわけで、この賃貸契約というものは香港ではちょっとした悩みの種なのです。

 私が住んでいる部屋の場合、二年前の更新の時は何も条件が変わらずに済んだのですが、残念ながら今回は「オーナーが物件を売却したがっている、新しいオーナーは自分で住みたがっている」という事情で交渉の余地なく退去が決定しました。で、それに関係して訪問があったのです。やってきたのは今のオーナーと新しいオーナーと不動産屋です。

 このあたりは香港流なのかな、と思います。人がまだ住んでいるのに、ずけずけとやってきて部屋の隅々を見て回るのです。ひょっとしたら人が住んでいる状態のほうがいいと思っているのかもしれません。現在住んでいる人に直接聞くことができますし、部屋の使われ方もわかりますし。
 私たちはというと、訪問の前は部屋の掃除に余念がありませんでした。オーナーが来るわけですから、仮にその時、部屋が傷んでいると指摘されてしまうと、退去のときに揉め事になります。子供が貼ってしまったシールを床や壁から一つ一つはがし、家具のいくつかはオーナーのものなので手入れをしました。そして子供にも言い聞かせて、粗相のないようにお出迎えをしたのです。

 当日やってきた人々の中で、今のオーナーは終始ご機嫌のようでした。きっとこの物件を高く売ることができたのでしょう。私に「ごめんなさいね、私たちはこの部屋を売ることにしたの」と気を使う余裕も持ち合わせていました。それに対して私は「私たちもこの部屋を4年エンジョイしました、ここはとてもいい部屋です」と愛想を返しました。英語を日本語に直すと奇妙ですね。
 新しいオーナーは台所で写真をぱちぱち撮り(リフォームを計画しているのだと思われます)、リビングの日当たりをとても気にしていて、英語で私に色々と問いかけてきました。私はそれに正直に答えました。そして私の回答が終わるとすぐに、今のオーナーが広東語で機関銃のように補足説明らしきものを始めました。

 これが現時点です。これから引越しが控えています。

2007年8月6日

(HK)『攻殻機動隊』を見ました。

 ふとBS2を見ると何かアニメをやっていて、そこに映っているのがずいぶんと香港っぽい街並みなんですね。でNHKのページを見てみると『攻殻機動隊』だそうで。題名だけは聞いたことありましたが、見るのは初めてでした。

 1995年の映画ですか。市街地の建物の上すれすれを飛行機がかすめていくのは、香港の空港がまだ九龍にあった時の光景そのもののように見えました。いや、私はリアルタイムで旧空港を経験してはいないのですけど。主人公たちが飲む缶ビールは当地おなじみの生力(サンミゲル)だったり、スターフェリーっぽい乗り物が背後に映ったり。高速道路自体もそれっぽいですが、そこから見える景色ときたら、まさに香港の下町です。圧巻は広告がぺたぺた貼ってあるぼろぼろの雑居ビル、それから道路に張り出した色とりどりの看板! 雰囲気よく出ていました。

 自分の中では香港の街並みは本当に当たり前の日常になってしまって、普段は何とも感じません。でも、こうやって物語の中で見せられると興奮してしまって「これは佐敦のあたりっぽい!」「(画面の中の看板に書かれた)浙江なんとか銀行って何それ!」とか、リアルタイムでぶつぶつつぶやいていました。今日はとても誰かに語りかけたかったです、自分が気付いたことについて。というのも今日は一人で見ていたもので。

 物語の舞台となったところを旅する『巡礼』なる趣味があるそうですが、分かるような気がします。映画のメッセージは万人に向けられているはずなのに、ある種の良くできた作品はあたかもそれが個人宛てであるかのように錯覚させます。そしてそれを受け取った観客は、メッセージを各自の方法で膨らましにかかる、と。他人と語り合うことや『巡礼』はメッセージの消化・昇華なんでしょう。とまあ作品のもたらす効果については分析できているのに、それを止められない自分がいます。

 ところで検索したけど出てこないです。浙江興業銀行か浙江商業銀行だったと思うんですけど。前半、逃げている人を川に追いつめて、女の人が透明になって格闘するシーンです。やがて決着がついた頃に男の人も現場に到着します。彼の背景に確か浙江興業銀行か浙江商業銀行の看板が縦書きであった気がするのです。登場人物の名前も、透明になる何とかという技術も知らずに映画を見ていましたが、看板だけが気になります。本当にどうでもいいことですね。

 とはいえ話はというと、途中から見たせいか、背景に気をとられすぎていたせいか、結局何だかよく分かりませんでした。台詞もコンピュータっぽく、こもることが多く聞き取りにくかったですし。なのでもう一度見ると思います。それでも再度背景のほうをじっくり見てしまいそうです。

2007年7月23日

(HK)ケロロのこと

 侵略宇宙人との交流を描いた『ケロロ軍曹』は香港でも我が家でも人気です。こちらでは日本のテレビシリーズをVCD化したものがごく普通に流通しています。一つのパッケージには3回分の放映が収録されており、値段もそれ単体で5,600円とさほど高くないのですが、シリーズ全部だと20以上にもなります。子供は3回分をいつもあっという間に見てしまい、すぐに次をねだります。親としては、ものを与えすぎるのはどうだろう、と考慮しつつ、少しずつ買い与えているところです。

 で、このケロロの劇場版の2作目が香港でも公開され、しかも九龍塘の映画館では日本版オリジナルに広東語字幕をつけて上映するというので、家族揃って行ってきました。他のほとんどの場所では広東語に吹き替えたものをやるそうなのですが。
 映画館には他の日本人家族もちらほらいました。午前中に入ったところ安い時間帯だったらしく、一人500円弱で見れました。日本の映画を考えると破格の安さです。映画館の中もきれいでした。

 映画はというと、ケロロたちの憎めないおバカさと、女子中高生たちが水着でがんばるところが見所でした、と書いてしまうと何だか怪しくなりますが……今回のストーリーは前作と異なり、夏美(ケロロたちが居候している日向家の長女)中心でした。それにしても『ケロロ軍曹』には女の子のキャラクターのほうが多く登場するなあ、という印象です。そして、それが香港でも人気のようです。

 というのも、会社のあちこちのデスクで『ケロロ軍曹』のグッズを見かけるのです。水着でよくわからないポーズをとっている女キャラのフィギュアを、女性エンジニアの机の上で発見したときは唖然としました。所詮おもちゃだからどうってことはないのかもしれません。でも、日本だとフィギュアって一部の人のための特別のおもちゃのような扱いで、少なくとも親が子供に買い与えるようなものではないはずで。香港だとそういう認識はないようです。単純に流行っているから、そして自分がいいと思って買っているんでしょう。

 いつも見ているVCDにも今回の映画にも、そういう男性向けのお色気っぽいところがあるような気がします。そういえば、どこかの家のだんなさんは子供のために買っていたはずなのに、気がついたら自分自身が夢中になっていた、そんな噂も聞きました。個人的にはこれくらいだったらほほえましくていいかな、と思っています。

 ちなみに、モア(中国名・摩亞)なる四字熟語大好きなキャラがいるのですが、彼女の台詞は字幕中は全く普通の中国語でした。やっぱり四字熟語は日中間で微妙にニュアンスが違うんでしょうか。残念でした。

2007年7月13日

(HK)新しい10ドル紙幣

 しばらく間が開いてしまうと、どういう感じに更新していたか忘れてしまいます。とりあえず今日はびっくりしたことから書き始めようと思います。

 香港の10ドルはわずか150円程度の価値しかありませんが、紙幣です。
 と、ここまで書いて思い出したことがあります。もう自分の中では当たり前になってしまったことですが、香港の紙幣はというと、20ドル以上の金額のものは三種類ずつ存在するんです。香港には中央銀行はなく大きな銀行三つがそれぞれ紙幣を発行しており、それらは(20ドル、50ドル、100ドル、500ドル、1000ドル)かける3で、十五種類になります。どの銀行が発行したものでも額面どおりに等価に扱われます。金額によって色が決まっているので、それで見分けます。

 ところで、10ドル紙幣だけは政府がつくっているのですが、それがこれからはプラスチック紙幣なるものに取って代わられるそうです。紙ではないので、プラスチック幣ですか。
 今日、おつりでたまたまもらったという友人から見せてもらいました。プラスチックというと分厚い、こども銀行的なイメージがありましたが、そうではありませんでした。折りたたみや汚れにつよいというそのプラスチックは表面がつるつるしていて、今思いだすと、選挙の投票の時の名前を書く紙に似ていました。あれも確かコシのある紙で、投票箱の中で折りたたまれた状態から自然に開く→開票がスムーズ、という理由で選定されたはずです。

 新しい10ドルは古いものとデザイン的には「ほとんど」変わっていません。けれど、唯一変わっている点にはかなり驚かされました。絵の一部が透明になっていたのです。穴が開いているわけではなくて、プラスチックだからできる芸当なんでしょう。
 わざわざその窓を通して相手の顔をのぞき込み、
「すげーよ、これ、見えるよ、見えるよ!」
 と、小学生か中学生のようにはしゃいでしまいました。


 7月1日には返還十周年のイベントがあり、サッカーの中田が香港に来ていたそうです。それよりも、一昨年香港に招かれ、人々に早食いの桁違いの能力を見せつけて、今もレストラン街の入り口のエスカレーターのところに写真が飾られている(はずの)小林氏の7月4日の敗退のほうが、個人的にはニュースでした。
 それから、中国製の食品は確かに気になりますが、でも何かしら食べないと生きていけないので、あまり考えないようにしている毎日です。

2007年5月7日

(HK)最近、時々暑いです。

 5月1日は休みで、子供二人連れてプールに行ってきました。屋内で泳ぐつもりで向かったところ、ちょうどその日から屋外も開放されていました。Tシャツ一枚がちょうどいいという陽気でした。でも汗ばむほどではなくて。気温表示は28℃でした。

 香港なので泳ごうと思ったら実はいつでも外で泳げるのでしょう。でも今までそんなことは考えたことがなかったので、好奇心で屋外に向かいました。消毒用のシャワーをくぐって出てみると、大きなプールに数人しか見えません。やっぱりまだみんな屋内にいるようです。

 おそるおそるプールに足を突っ込みました。冷たいですが、すぐに抜くほどではありません。屈んで下半身を浸します。ひんやりきます。ここで急に胸まで入るのはなあ、ちょっとなあ、と意気地なく考えましたが、ふと見ると、同じタイミングかつ同じペースで入った娘はもうすっかり水の中にいました。おいおい、まじっすか。

 娘に負けずに、加えて臆病を悟られないように私も水の中に入ります。大丈夫でした。慣れてしまえば水はそれほど冷たくありません。そしてそれは昔の記憶を引っ張り出してきました。寒いところに子供のころ住んでいたので、夏でもこれくらいの気温にしかならない日もあって、でもそんな時も泳いでいたなあ、と。あんまり活発な子供ではありませんでしたが。

 浮き輪をつけた娘は勢いよく水音をたて、プールの中央へと進んでいきます。足がつく深さのプールなのでとりあえず娘を遊ばせておき、息子を迎えに行くことにしました。プールのそばでまだ突っ立っているのです。
 抱きかかえて水につけました。息子は足をばたばたさせて抵抗しました。寒いのか、顔は青ざめているようにも見えました。その様子を見て、なんか自分に似たのかなあと思い、やれやれという気持ちとほほえましさが同時にきました。

2007年4月30日

(HK)ゴールデンウィークお疲れ様です。

「赤信号の約束があるから、青信号の自由がある」というような内容の標語を深センで目撃しました。いや、目撃したことを思い出しました。

 今まで生きていて赤信号が約束だと思ったことはありません。あ、でも、約束=ルールのような感触なのでしょうか、中国語では。

 だとすると、問題なのは青信号で……「経済発展著しい中国において青信号を無邪気に『自由』と解釈するあたり、抱えている歪みが端的にあらわれているといえるのではないか」……試しに深く考えもせずに報道っぽい文章を作文してみました。が、だめっすね。まだまだレベルが低い。

 今週は日本も中国も大型連休ですが、香港は違います。明日一日しか休みがないのです。

2007年4月28日

(HK)606号と610号に名前が

 四川から香港まで飛行機に乗ってやってきた2匹にレレとインインという名前がついたそうです。漢字で書くと楽楽(オス・かつての606号)と盈盈(メス・かつての610号)だそうです。晴れて番号から卒業できました。

 この中国政府からの贈り物については前にこちらで少し書きました。しかし、なぜパンダに繰り返し系の名前をつけるのかという疑問が残ります。よっぽど香港の人に聞こうと思いましたが、怪訝な顔をされそうだったので断念しました。

 盈というのは見たことがない字だったので調べてみました。漢和辞典には『エイ・みちる』という読みが書いてありました。加えて『盈盈一水(えいえいいっすい)』なる四字熟語があり、『思い合う人と直接会うことのできない例え』だそうです。『大きな川に隔てられて、お互いに姿をみることしか出来ないでいる両岸の男女=彦星と織姫』という解説もありました。切なさに何か「くうっ」と来るものがあります。ちなみにこの語は漢字検定準一級レベルとのこと。盈という字が女性の流れるような美しさを意味している、と私は理解しました。
 自分の知らない、深い知識の世界を垣間見ました。

2007年4月15日

(HK)中国で働くということについて


 現在香港4年目の私から見ると、こういうニュースは本当に心が痛みます。中国での経験を生かした就職なんて、私の知っている範囲では聞いたことがありません。「中国の経験がある」=「劣悪環境でこき使っても文句を言わない耐性をもつ」と都合よく解釈されるだけです。こちらだったら実例が色々あります。

 例えば、まあ運良く中国の日系企業に就職できたとしましょう。張り切って仕事をやろうとする……のはいいのですが、自分の上司が日本人で、彼から中国人とのインターフェースの役割しか与えられなかったら、どうでしょうか。
 もっとネガティブな情報を付け加えると、上司は日本からの駐在員で住居・医療・教育がフルサポートなのに対し、現地採用はそれらが皆無ということも良く聞く話です。仕事の上でも、駐在員が無能なのにも関わらずおいしいところを全部取っていく、というのも普通にあるでしょう。舞台が海外に変わっただけで、よくあるドラマみたいな話です。

 格差なんてない方がいい、と思うのは当然です。でも私はこちらに来て働いているうちに、あからさまな格差を目の当たりにしました。まずはこちらの人間と日本人の格差、そして日本人内の格差。好きで香港に来た以上、そういった格差は「そこに確かにあるもの」と受け入れざるを得ませんでした。その意味で自分は善人ではないと思います。むしろ開き直って、私は格差を維持する体制に回っているのでしょう、あまり心地よい想像ではないですが。
 「実力主義」というきれいごとでこういった事実は隠蔽されがちになっています。もし仕事の上での機会が等しく与えられたならば「実力主義」も悪くはないのかもしれませんが、現状はそうではないことも多いと思います。

 私の場合、香港にいるのは色々検討した結果であって、「香港にいること」が目的ではありません。なので、新卒で普通の会社に就職したときのことを振り返ると、大変なことになってしまったなあ、とつくづく思います。そしてその後、こういうのもありかなあ、時代が時代だし……と現状を肯定するのが常です。
 さあ来週もまあぼちぼち働きますよ。

2007年4月12日

(HK)初めてアダルトビデオを買ったときのこと

 自分があまりにも滑稽だったので、主に自分のために書いておきます。どこで買ったかとか、いくらだったかとか、買い物に役立つ情報は記しません。内容について詳しく記すこともしません。読んでいて性的に不快にならないように努めます。

 香港の電気街を初めて訪れたときから、アダルトな商品を扱う店の存在に気づいていました。日本製のAVを売っている店では、たいてい日本語で書かれた女優のポスターが壁に貼ってあって、不思議な気持ちになったものです。でも当時はお店の人が怖そうで、日本人が買いにきたとばれると大変なことになりそうで、私は中に入らずに横目で見て通り過ぎていました。
 でも最近は「客なんだからそんなにひどい目にあうことはないだろう」とふてぶてしく考えるようになりました。そこで、何も買わずに出ることが許されなかった場合の損害額について検討した後に、ためしに店に入ってみることにしました。結局私が行ったところでは出入りは自由で、買わずに出てもとがめられませんでしたが。

 そして二つの店から計三枚のディスクを買いました。全て日本のものです。ディスクはどれも透明なビニール封筒に二つ折りの紙と一緒に入っていました。紙はもともとのパッケージのカラーコピーのようでした。ディスクは折られた紙の間にあって、一応保護されています。プラスチックケースのような余計なものはないのです。
 店に入って分かったことがあります。日本ではアダルトビデオには規制があるのですが、香港の店で売られているものもやはり日本の規制がかかったものでした。残念でしたが、しかし色々探して回るうちに、ついに私はあるビデオに出会いました……そのカラーコピーには「規制なし」という内容の文言があったのです。当然日本語でです。ディスクは目立たないところに置いてあり、中国語のポップはついていませんでした。
 正直に言うと、見つけたとき私は猛烈に「出し抜いてやった」感がしました。私は日本人だから、日本語が読めるから、この店のたくさんの商品の中から「規制なし」を見つけることができたのだ、と。
 うきうきしながら私は家に帰りました。そして三枚のディスクを納戸がわりに使っている雑然とした部屋の棚に隠しました。今度夜中にこっそり見ようと考えたのです。

 さて次の日、私は仕事を終えて家に戻り、ふと気になったので納戸に向かいました。すると、何とそこは突然整理整頓されていたのです! 恐る恐る棚に向かいディスクを確認します。それらは同じ場所にありましたが、周りに置かれているものが全然違いました……。そして私が問う前に妻は、
「何か変なのあったよ」
 とほのめかす始末。思い立って掃除をしたそうです、よりによって隠した次の日に。
 しかしめげてはいられなく、私はその深夜、それらを鑑賞してしまうことにしました。カラーコピーと同じデザインのディスクをデッキに突っ込みます。早送りのボタンで著作権の警告をすっ飛ばします。やがて画面には突然中国語のタイトルが。そして出てくるのは、明らかに日本人ではない女性。思わずカラーコピーを手に取ります。日本人女優が出演している「規制なし」品なはずですが……これは店の手違いでしょうか。文句を言えば取り替えてもらえるのでしょうか……。彼女は80年代のアイドルのような服装をして自転車に乗っています。そのシーンが延々と続きます。
 私はよろよろとデッキに手を伸ばし、ディスクを取り出しました。そしてついに発見しました、ディスクにはシールが貼ってあったのです。やけになってそれを乱暴にはがすと、先ほど見た中国語のタイトルが現れました。それだけではなく、ディスクはDVDですらありませんでした。VCD(Video CD)でした……。欲深な日本人の私はまんまとだまされてしまったのです。もう苦情をいうパワーなど残っていません。
 一応報告しますと、三枚中一枚だけは規制ありのごく普通のアダルトビデオでした。それを売っていた店は大丈夫でしたが、もう一つの店で私は二枚ニセモノをつかまされたのです。

2007年3月22日

(HK)そういえば去年は台湾に贈ってました。

 香港が中国に戻ってきて10年になるとかで、中国がパンダを贈ってくれます。まあありがちに。
 で、中国は誠意を見せて、なるべく「よい」パンダを選別した、とのことです。ニュースで言っていました。選ばれたパンダは雄の「606号」と雌の「610号」だと。
 香港で名づけるから、とりあえずそういう呼び方になっているのでしょう。でも「よくわからないが何だかすごそう」な印象を受けました。
 それから、中国はパンダを厳重に管理しているんだなあ、やっぱり戦略物資ってことかあ、とも思いました。

2007年3月19日

(JAPAN)思い出し書き

 少し恥ずかしくなったので昨日のを下に送りますよ。


 この前日本に出張に行ったときのことを、備忘録的に書きます。


 一緒に行った同僚が、香港の人たちにお土産を買いたいというので向かったんです、駅前のジャスコ。最終日の夕食の前です。そこで彼はファミリーサイズのチョコレートとか飴だとか、買い物かご二つにぎっしり詰め込んでいました。ちょうど時期が旧正月前で、香港の家ではお正月の挨拶に来た人にそういうちょっとしたお菓子を出すならわしがあるからでしょう。でもそれは日本土産としてはどうだろう? と内心思っていましたが。


 で、彼と一緒にレジに向かいました。レジのお姉さんがバーコードを読み取り終わったのを見計らい、私はかごの中身をビニール袋につめはじめました。香港のスーパーでは袋詰めはお店の人の仕事ですが、ここは日本です。わざわざ説明するよりも、自分が手伝ってさっさと終えて店を出ようと。


 一つ一つビニール袋に移していると、小さい発泡スチロールのトレイを見つけました。なんと生イクラのパックでした。驚いて彼に伝えました、これは香港へのお土産にはならないよ。腐ってしまうから、と。

 でも彼は、
「ノープロブレム。それは今日の夜食さ」
 と明るく答えたのでした。

2007年3月18日

(HK)登るんだ。

梅田望夫 My Life Between Silicon Valley and Japan - 直感を信じろ、自分を信じろ、好きを貫け、人を褒めろ、人の粗探ししてる暇があったら自分で何かやれ。

 天邪鬼な私はここ香港にて梅田さんのメッセージを読んでいます。
 はじめに、そこに書かれた生き方はとてもすばらしいと思いました。でも今日はそれ以外に考えたことを書き記します。

 今回の梅田さんのメッセージは一般論ですが、梅田さんがアメリカにいる点と、ソフトウェアに関係するはてなに勤めているという点は、常に割り引かなければいけないと思います。ウェブ上では似たような立場の人の意見が目立ち、それがウェブ上にバイアスを作っているような気がするのです。

 例えば、同じエンジニアでもトヨタでエンジンを設計している人だとか、シャープで液晶のプロセスに関わっている人だとかは、絶対に実名でウェブに出てこないでしょう。彼らが仕事のことを書いたところで利益がなく、というか機密を漏らしているだけになるので。また、長時間労働でエンジニアを拘束し、それによってアメリカのホワイトカラーから仕事を奪い取っている中国やインドの会社も存在するはずです。低賃金の人々は将来の給料アップのために劣悪な労働条件をいとわないでしょう。
 Googleのような理想的(と言われている)環境は、アメリカ全ての仕事に当てはまるわけではなく、結局、ウェブに見えている「人と人のつながり」や「仕事のすばらしさ」だけが世界の全てではありません。

 優秀な人材がアメリカに集まる、というのを否定しているわけではありません。それはちょうど世界中の野球選手が大リーグを目指すのと同じかもしれません。だとすると、野球好きな子供が大きくなるにつれて自分の才能のなさに気づくように、ソフトウェア好きな人も自分の能力についてよく検討したほうがいいよ、と言いたいのです。「ソフトウェアなら自分も使っているし、色々情報も知っているし」、なんて安易に考える人がいるような気がします。ソフトウェアは始めるのにお金があまりかかりませんが、その低い参入障壁ゆえに今後競争が熾烈になると私は予想します。ましてますますグローバルになるこの時代においては。

 トリノオリンピックはもう一年以上前になりますか。あれを見ていて、北欧の選手はどの競技でも強いなあと感じました。また、日本だとただのマイナースポーツですが、向こうでは多くの人々が寒い中観戦します。
 選手たちの生まれた環境が冬季のスポーツをするのに適していて、かの国の身体能力に優れた人の何割かは冬季競技を選択するのでしょう。また、そういうスポーツを楽しむ土壌がヨーロッパにはあるんですね。
 反面、野球の人気はありませんが。


 強引な結論として、ウェブ上で学生と思しき人によく見られるアメリカやソフトウェアやベンチャーの単純な礼賛は視野が狭いゆえの行きすぎではないかと。また、日本人に適した仕事分野というものが他にあるはずだと。私自身は私のいる業界が日本人に向いていると信じているのですが、だからこそ香港にいるのですが。
 繰り返しになりますが、今回の梅田さんのメッセージは仕事や生き方に対するものであり、私はそれについてどうのこうの言っているわけではありません。
 考えてみると、いくつかの仕事は取っ掛かりが難しい(=梅田さん風に言えば「高速道路が開通してない」)し、ウェブにはあまり情報がありません。何億円もする装置がないとはじめられなかったりしますから、ベンチャーは難しいでしょう。だからといってそれが「好きなこと」かつ「飯が食えそうなこと」にならないかというと、そんなことはないのです。
 ええと、つまり、今の香港での自分の仕事がそういうタイプのものなはずなので、もっと「自分で何かやれ」←自分へのメッセージ。


 ほらそこに「巨人の肩」が! 登るんだ!

(HK)香港ディズニーランドのこと

 初めて行ってきました。楽しかったです。

 すいていました。ファストパスの機械には布がかけてあり、使われていませんでした。

 黄色い服を着て坊主頭の、まさしく少林寺というような雰囲気の若いお兄さんたちがものすごい勢いでコーヒーカップを回していたのが一番印象に残りました。何か間違っている……。

2007年2月13日

(Japan)そういえば明日は

 香港の人々と一緒に出張で日本に来ています。冬は香港と日本で気温差が大きく、加えて今滞在している地方は雪が普通に降る地域なので、一番厚いコートを持ってきたのですが、やっぱり暖冬なんですね。移動中のどこにも積もった雪は見かけませんでした。


 ミーティングの後にディナーという名の飲み会が用意されていて、ビールを飲んだり鍋をつついたりしました。日本人側が香港人側に英語で話題を振っているのを、横で眺めていました。決してつまらなかったわけではなく、本日の主賓は香港から来た人々であり、そうすると日本人である自分は除外されているような気がしたので。隣に座った日本人とずっと日本語で話しつづけることもできたのですが、場の雰囲気というのを個人的に大事にしたく、彼らが楽しく英語で話しつづけてくれればいいな、と思ったのです。時々もっと話が膨らむようにネタを提供したりもしました。
 昔から飲み会の振る舞いが得意ではありません。気を使いすぎて疲れてしまうこともあります。今日も近くの英語の話に気をとられていて、でもその間にビールをしきりに飲んでいたらしく(というのも聞いていただけであまり話していなかったからでしょう)、結果的に向かいの人にビールを何度も一方的に注いでもらってしまいました。


 飲み会が終わると、香港からの出張者はたいてい連れだってコンビニに行きます。飲み物やお菓子を買うのです。今回私の上司は何種類もの『キットカット』に目を奪われていました。私もこんなにバリエーションがあるとは知りませんでした。バレンタインデーのチョコレートが棚一つを占拠しているのを見ました。そういえば香港の場合、この『情人節』には男の人が花束を贈らなければならないそうです。彼らはどうしたのかな、とちょっと気になりました。


 で、私は『たけのこの里』を買ってきて、ホテルでインターネットをしながらつまんでいます。

2007年2月4日

(HK)テレビ日記

 海上保安庁の人々の活躍を描く「海猿」を、香港のテレビ局が放映していました。安く抑えるためでしょう、海外のドラマを放映する場合、こちらでは吹き替えを当てずに中国語の字幕をつけて済ませるケースがほとんどです。そのためこの「海猿」でも日本語がそのまま残っており、我が家でもその番組を楽しむことができました。


 中国の不審船が沈没しかかっている回でした。甲板にその船の乗組員が出てきて、巡視艇の救助を待っていました。主人公側が彼らに中国語で呼びかけます。するとその訳が日本語で字幕として表示されました。
 ところで、今放映されているのは香港ですから、そのオリジナルの字幕の上にさらに中国語がつき……画面の約半分を字が覆うという異常な事態になりました。


 で、思ったのですが、「海猿」を香港でやるというのはありなんでしょうか。中国人が日本の海を守るプロに感情移入できるのでしょうか。大体、海上自衛隊と海上保安庁の区別もついていない人々です。というのも、尖閣諸島をめぐるトラブルのときも、日本海軍に邪魔されたとか報道されていましたし。


 ドラマは進行し、不審船の乗組員は安全に救助されました。けれども主人公たちは乗組員の雰囲気に疑問を持ちます。まだ船には何かある……そう感じた主人公たちは沈没寸前の船に再び戻り、船底に中国人密航者を発見しました。乗組員たちは事実が露呈することを恐れ、密航者たちを閉じ込め見殺しにしていたようです。


 裏にどういう事情があったのかはドラマの中では明かされませんでした。主人公たちが奮闘し、密航者をも助け出すというのが主題ですから。乗組員たちは良心のない人々という描き方をされていただけです。密航者は字幕では「偸渡客」と明記されていました。「偸」は「盗む」で、つまり日本語のようなオブラートなんて皆無の言葉です。


 中国人の密航という犯罪を典型的に描写することについては、当然のことのような気もしますし、もし日本人がそういう風に描かれると……と想像すると少し申し訳ないような気もします。何というか、判断できません。ひょっとしたら香港は中国本土の人間の密航先なので、その描写に共感できたのかもしれません。
 国籍について極力思い込みをせずに人間だけを見ようという態度でいますが、それとは別に、こういった件は本当に難しいなあと思ったのです。

2007年1月26日

(HK)イクラとスジコが違うように

 タラと偽って「油魚」なるものが売られ、それを食べた人が消化不良をおこすという騒ぎが香港で起こっています。問題になったのは冷凍の切り身です。「油魚」の油は分解しにくいのだそうです。
 容疑のかかった「油魚」の写真が出回っています。見ると彼は黒くて細くてとがったヒレを持っていて、やっぱりどことなく悪者のような印象でした。日本名が何なのかわからなくて、もどかしいです。ある人に聞いたところ「台湾では肥料にするために捕っている」と言っていましたが、これも本当かどうか不明です。


 ところで今回の騒動の「油魚」はインドネシアからの輸入品です。値段がタラの数分の一(タラもそんなに高い魚ではないと思うのですが……)だと言われています。言葉の翻訳のせいでこういう問題になった、そんな説明もありました。
 ふと、この前食べたケンタッキーフライドチキンのことを思い出しました。


 当地でマックはよく食べます。一方ケンタッキーはというと、今までチキンバーガーを数回買ったことがある程度でした。でもこの前、折り込みチラシがポストに入っていたので、試しに宅配してもらったのです。
 で、その時に気づいたのですが、メニューで鶏の部位について詳しく説明しているようなのです。日本語だったらせいぜい何ピース入っているかという情報しかないと思います。けれども、それには上[骨+卑]がいくつ、下[骨+卑]がいくつ、というように書いてあり、こだわりが見られました。全部で五種類ぐらいの部位がありました。
 加えて、thighだとかdrumstickだとか、中国語に対応するように英語も記されていて驚きました。今KFC HKのウェブで確認しながら書いています。ちなみに英和辞典によるとthighは「もも」、drumstickは「脚の下半分」とのことで、なんだかよくわからない解説でした。


 興味がある事柄だから言葉が発展する、ということなのでしょう。ひょっとするとインドネシアではタラも「油魚」も区別なかったのかもしれません。昔日本の誇るお菓子『たべっ子動物』にて、英語では牛や鶏などは雄と雌でぜんぜん違う呼び名なのだと学んでいたのですが、今回そういう事実を改めて認識した次第です。

2007年1月6日

(HK)考えたことを書き残しておきます。

 あけましておめでとうございます。


 旧正月がメインの香港にいるせいか、実生活ではこういった挨拶をほとんど交わさずに一週間ほど経ってしまいました。家族を除くと会社しか人間関係がなく、そこでは30日の金曜日まで働いて新年も2日から出ていたので、私にとってはいつもの週よりも一日だけ休みが多いという程度の認識でした。やろうとすれば大掃除をしたり、おせちを作ったり、黄大仙(うぉんたいしん)というところに行けば寺院があって初詣もできたりするので、正月を「きちんと」迎えることも不可能ではなかったのですが。結局普段よりも若干のんびりと過ごしただけでした。


 昨年は幸い、家族の誰も大きな病気にかかることはなかったので、やはりまずはそれを今年も続けたいです。私は一昨年腎結石で入院してしまい、その際「絶対再発するぞ、また痛い思いをしたくなければ水を飲め」と言われたので、それ以来意識して水分を取るようにしています。おかげで大丈夫です。


 娘は最近、時々鏡文字になりながらもひらがなが書けるようになりました。女の子っぽいかわいらしい絵も描きます。こちらの人に話しかけられると、照れながら「ハロー」と答えたりしています。そして重くなってきました。
 息子は近頃乱暴です。今朝も私がベッドでぐずぐずと寝ていると、先に起きた息子によって首筋を踏みつけられました。元気なことは大変いいのですが、人の痛みを知ってもらいたいと思います。姉がいるのを見ているせいか、ブロックで遊びだすのがずいぶん早かったです。今年は大きく成長する時期でしょう。
 妻は、というか、こうした文章にふさわしい適当な呼称を私は未だに見つけていないのですが、彼女は、異国で色々大変だろうなあと感じています。昔から主に仕事の面で好きなようにさせてもらっていて、とても感謝しています。こちらの日本人の狭い人間関係で疲れることもあるようなので、自分がアドバイスしたり助けたりできればいいと思います。時々日曜日に私が子供二人を連れて外出すると「ゆっくりできる」と言うので、そういう機会も設けたいです。本当は家に早く帰ることがなにより良いはずなのですが、仕事上それはなかなか難しいのですが、努力します。


 このページをご覧の皆様も、よいお年でありますようにお祈りいたします。時々文を書く以外趣味がない人間ですが、こうしてこのページを続けているのも見に来てくださる皆様がいるからです。ふっと思いついた内容を、これからも短い文にしていきます。更新が多い人やウェブ上で人気がある人をとてもうらやましく感じることがありますが、これが私にできる・許されるスタイルだと思っています。


 ここには香港で体験したことなどを書いていきます。もしよろしければストーリーっぽいものを書いているhttp://d.hatena.ne.jp/toomuchpopcorn/もどうぞ。ええ、これは「もっと更新しよう」という自分に対するプレッシャーでもあります。