2007年12月9日

(HK)大家来襲

 ネットは引き続き好きですが、どうも他人様のを読んでいるうちに程よく疲れてしまって、いつもそれで終わってしまっています。「書こう」という気になかなかならないです。ですが、とりあえず当地で普通に元気にやっております。


 この前、うちの部屋に大家(オーナー)がやってきました。数週間前に不動産屋から、今住んでいる部屋の契約の継続ができなかったことと、今回のオーナーの訪問について、連絡を受けていたのですが。

 香港では部屋の賃貸契約は二年単位が普通です。同じ部屋に住み続けるためには二年ごとに契約を更新する必要があります。日本の事情に明るくないので厳密な比較ではありませんが、日本よりは貸し手に有利な状況のようです。というのもここではオーナーが延長しないと言い出したら、借り手は退去せざるを得ないので。また、最近のように景気上昇局面だと、更新に際して家賃の値上げを言い渡されることも多いです。そんなわけで、この賃貸契約というものは香港ではちょっとした悩みの種なのです。

 私が住んでいる部屋の場合、二年前の更新の時は何も条件が変わらずに済んだのですが、残念ながら今回は「オーナーが物件を売却したがっている、新しいオーナーは自分で住みたがっている」という事情で交渉の余地なく退去が決定しました。で、それに関係して訪問があったのです。やってきたのは今のオーナーと新しいオーナーと不動産屋です。

 このあたりは香港流なのかな、と思います。人がまだ住んでいるのに、ずけずけとやってきて部屋の隅々を見て回るのです。ひょっとしたら人が住んでいる状態のほうがいいと思っているのかもしれません。現在住んでいる人に直接聞くことができますし、部屋の使われ方もわかりますし。
 私たちはというと、訪問の前は部屋の掃除に余念がありませんでした。オーナーが来るわけですから、仮にその時、部屋が傷んでいると指摘されてしまうと、退去のときに揉め事になります。子供が貼ってしまったシールを床や壁から一つ一つはがし、家具のいくつかはオーナーのものなので手入れをしました。そして子供にも言い聞かせて、粗相のないようにお出迎えをしたのです。

 当日やってきた人々の中で、今のオーナーは終始ご機嫌のようでした。きっとこの物件を高く売ることができたのでしょう。私に「ごめんなさいね、私たちはこの部屋を売ることにしたの」と気を使う余裕も持ち合わせていました。それに対して私は「私たちもこの部屋を4年エンジョイしました、ここはとてもいい部屋です」と愛想を返しました。英語を日本語に直すと奇妙ですね。
 新しいオーナーは台所で写真をぱちぱち撮り(リフォームを計画しているのだと思われます)、リビングの日当たりをとても気にしていて、英語で私に色々と問いかけてきました。私はそれに正直に答えました。そして私の回答が終わるとすぐに、今のオーナーが広東語で機関銃のように補足説明らしきものを始めました。

 これが現時点です。これから引越しが控えています。

2007年8月6日

(HK)『攻殻機動隊』を見ました。

 ふとBS2を見ると何かアニメをやっていて、そこに映っているのがずいぶんと香港っぽい街並みなんですね。でNHKのページを見てみると『攻殻機動隊』だそうで。題名だけは聞いたことありましたが、見るのは初めてでした。

 1995年の映画ですか。市街地の建物の上すれすれを飛行機がかすめていくのは、香港の空港がまだ九龍にあった時の光景そのもののように見えました。いや、私はリアルタイムで旧空港を経験してはいないのですけど。主人公たちが飲む缶ビールは当地おなじみの生力(サンミゲル)だったり、スターフェリーっぽい乗り物が背後に映ったり。高速道路自体もそれっぽいですが、そこから見える景色ときたら、まさに香港の下町です。圧巻は広告がぺたぺた貼ってあるぼろぼろの雑居ビル、それから道路に張り出した色とりどりの看板! 雰囲気よく出ていました。

 自分の中では香港の街並みは本当に当たり前の日常になってしまって、普段は何とも感じません。でも、こうやって物語の中で見せられると興奮してしまって「これは佐敦のあたりっぽい!」「(画面の中の看板に書かれた)浙江なんとか銀行って何それ!」とか、リアルタイムでぶつぶつつぶやいていました。今日はとても誰かに語りかけたかったです、自分が気付いたことについて。というのも今日は一人で見ていたもので。

 物語の舞台となったところを旅する『巡礼』なる趣味があるそうですが、分かるような気がします。映画のメッセージは万人に向けられているはずなのに、ある種の良くできた作品はあたかもそれが個人宛てであるかのように錯覚させます。そしてそれを受け取った観客は、メッセージを各自の方法で膨らましにかかる、と。他人と語り合うことや『巡礼』はメッセージの消化・昇華なんでしょう。とまあ作品のもたらす効果については分析できているのに、それを止められない自分がいます。

 ところで検索したけど出てこないです。浙江興業銀行か浙江商業銀行だったと思うんですけど。前半、逃げている人を川に追いつめて、女の人が透明になって格闘するシーンです。やがて決着がついた頃に男の人も現場に到着します。彼の背景に確か浙江興業銀行か浙江商業銀行の看板が縦書きであった気がするのです。登場人物の名前も、透明になる何とかという技術も知らずに映画を見ていましたが、看板だけが気になります。本当にどうでもいいことですね。

 とはいえ話はというと、途中から見たせいか、背景に気をとられすぎていたせいか、結局何だかよく分かりませんでした。台詞もコンピュータっぽく、こもることが多く聞き取りにくかったですし。なのでもう一度見ると思います。それでも再度背景のほうをじっくり見てしまいそうです。